Q.相手に期待するからしんどくなる。期待しない。と言う話を以前されていましたがどの程度期待しないですか? 奥様在宅、為末さん外出。為末さんの干した洗濯物が雨なのに洗濯物取り込まれていなくてもがっかりしませんか?
為末の答え
これはよくありますね。洗濯物を干すという行為は家庭内の仕事のどちらが責任かがはっきりしない場合に、状況から考えると対応して然るべき立場の人が対応しなかった場合の話かと思います。まあだいたい家庭の仕事は責任ははっきりしませんが。こういうことは家庭において結構とありまして、私なんかは随分と相手の想定通り動かなくて妻は腹を立ててきたのだろうと思います。
それでも数年妻といまして、このずれはずいぶんおさまってきました。言えば直るところと、言っても直らないところの線引きができてきたからだと思います。こういった問題の原因はお互いの当たり前という認識がずれていることからおきますので、時間があればある程度は解決するんだと思います。大事な点は認識のずれは把握することはできても、完全に解消することは不可能だという点です。じゃあその場合どうしたらいいかというと、そういうもんだと割り切るか、関係をやめるかのどちらかだと思います。
なにしろ私もそうですが、大人になって人はほとんど変わりません。考えてみると簡単で、人間はコントロールできると思ってしまいがちなのですが、例えば満員電車が気にくわないと思っている人でも、毎日怒っている人はいません。いつかは諦めてそういうもんだと割り切ってあとは自分が電車に乗るかどうか、乗らないといけない生活をするかどうかを判断するだけです。
期待の厄介なところは、取引の感情です。これだけやったのだから、これぐらいはやってくれて当たり前という取引の割合がうまくいかない時に、人は腹が立ちます。お皿を洗ったのに洗濯物を入れてくれなかったという怒りはどこかにあるのではないでしょうか。人間ですので完全に見返りを求めない善意はなかなか難しいですが、行き過ぎると常に何かを期待されている重圧を感じながらになってしまいます。
さてとりとめもない話でしたが、一つスポーツ心理学でよく言われる言葉があります。
”コントロールできないものではなく、できるものに意識を向ける”
他人はコントロールできないというのをまずは大前提にしておく方が、自分もいちいち苛立たなくて人生が豊かになるのではないかと思います。ちなみに期待に関してとても詳しく書いてある本がプレジデント社から”諦める力”という題で出ています。一度ごらんになってみてください。