Deportare Partners Newsletterより
うちの子も4歳になりました。子供がいると不思議と見える風景が変わります。毎朝通勤しながら、元気に登校する子供たちが目につくようになりました。学校でハードルを教えることもありますが、無邪気にハードルに挑む子供たちを見て微笑ましくそして頼もしく思います。
一方で、様々な情報に触れて日本が面している大変な状況を思うと、心が重くなります。このような時代において、子供には何を伝えればいいのか。なにしろ子供だけでなく大人だって不安なぐらいですし。
仏教に泥中の蓮という言葉があります。泥の中でも、美しく咲く蓮の様子から、厳しい環境でもたくましく理想を持って生きていく、という意味で使われます。普段、人には優しくしなさい、夢を持ちなさい、諦めないで努力しなさいと子供には伝えながら、大人たちも社会でそれを実践することがとても難しいことだと知っています。世間はなかなかに世知辛いところです。誰もが優しくしてくれるわけでもありません。頑張ればなんでも夢が叶うわけでもありません。そして、何より一番大事な自分のこころ自体が自分の思うようにはならないわけです。
思い通りにならない社会と自分のこころと向き合いながら、それでもたくましくしなやかに生きていって欲しい。そのために自分にできることは言葉にすることではないかと思い、この生き抜くチカラという本を作りました。
『自分が勝てる場所を見極める』
『努力は夢中に勝てない』
『苦しい時ほど種を蒔く』
『みんなは誰でもないことが多い』
どの言葉も私の競技人生の経験からきています。陸上は基本的に一人であり、長い戦いです。逃げないでとにかく頑張るやり方は短期間では強いですが長続きしません。何しろ一番大事なのは自分の心です。こころの元気がなくなると全てのエンジンが動かなくなってしまいます。かといって、競技時代ではのらりくらりとだけ生きていくわけにもいきません。時に頑張りながら、時には休みながら、特にはくよくよしながらそれでも前に進むことが大切でした。
私は子供の頃、綺麗事が嫌いでしたから、言葉だけは子供用にして、生き抜く上で自分が感じたことを直球どまんなかで書いています。ですから、子供向けながらメッセージは大人にも伝わるのではないかと思っています。ぜひ、親子で一緒に読んで、考えるきっかけになるととてもうれしいです。
為末大
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