日米開戦当日、当時の思想家、文筆家、詩人が綴った言葉をまとめた本。読んでいて当時の高揚感と不安感が伝わってくる。時勢もあったのだろうけれども戦争を喜ぶ言葉が多数ある。例えばこのようなものがある。
”宣戦の詔書が渙発された。0時、明治製菓の二階で黙然として聞いていた。今日みたいに嬉しい日はまたとない。うれしいというか何というかとにかく胸の清々しい気持ちだ”
黒田三郎(詩人)
”いよいよ来るべきものは来たのだ。みたわれとして一死報国の時がきたのだ。飽まで落ち着いて、この時を生き抜かん”
青野季吉(文芸評論家)
”宣戦のみことのりの降ったをりの感激、せめてまう10年若くて、うけたまはらなかったことの、くちをしいほど、心おどりを覚えた”
折口信夫(民俗学者)
欧米列強に虐げられているという認識が強かったのかもしれない。興味深いのは、政治に関わる人間は憂いているというか、冷静な表現が多かった。戦力の現実を知っていたからか。
人間は、どっちつかずの状況に長く置かれると、ともかく決断してしまいたい気持ちに狩られることがある。当時の空気はそのようなものだったのだろうか。吉本さんのこの表現が、一番当時の空気を表しているように感じた。
”ものすごく開放感がありました。パーッと天地が開けたほどの開放感でした”
吉本隆明(思想家)