「あそびをせんとや生まれけむ」
オフィスにいらっしゃって、弊社のモニターに白川静のこの言葉を大きく映し出しました。「スポーツは身体と環境の間であそぶこと」という考えから出発したのがDeportare Partnersでしたから、とても共感をしました。それが株式会社ジャクエツ(以下、ジャクエツ)さんとの最初の出会いです。
「似たもの同士ですからまずは何か話し始めてみましょうか」
何度も敦賀の本社に伺って、ジャクエツさんが大切にしていることを伺いました。あそぶことの大切さ。あそびをデザインすることの難しさ(自分で思いついてあそぶのがあそびなのに、それをデザインで促すことの矛盾と面白さ!)。毎回訪れるたびに福井のお酒をいただきました。敦賀駅近くのお寿司屋さんが美味しかった。
次第に一緒に遊具を作ってみましょうか、ということになりました。三人の社員の方と会わせていただきました。私は遊具を作るのは当然初めてです。
まずは人間はどんな身体になっていて、どんな動きをしているのか。子供の時にやっていてほしい動きは何か。でも、形式的に運動すると自由がなくなり、動きの豊かさがなくなってしまう。どうやれば、子供は自由に遊んでいるままで、引き出したい動きをするように上手くデザインするか。何度も会議を行いました。
自然の中で体を動かすことが一番良いはずです。だったらなぜ遊具を作るのか。遊具はどこかに人間の意図が入りますから、どうしても子供達の動きを誘導してしまいます。遊具は何のためにあるのか。そんなことも議論して考えました。
そうして次第にKepler特有のデザインである、楕円形の形が出来上がってきました。元々は私が、海外のトレーニングでぐるぐる回る器具を思い出したところからきています。
デザイナーの本荘さんが、まんまるだったかたちを少し崩してくれました。そうすることでぐるぐる回っている時に、スピードに抑揚ができて楽しくなりました。
実験を行うと、想像以上に子供たちが遊んでくれました。滑り台にしている子がいて、それちょっと使い方違うんだけどなと思いましたが、子供が遊び方を決めるわけですから、これはこれでいいかもなと思いました。
その後Keplerには、不安定な場所で遊ぶことで体幹を作る、体を捻ることで空中感覚を掴む、という要素が加わっていき、最終的に大きなタワーになりました。ちょっと盛り込みすぎたかもというぐらい大きくなって。
初めての納入は千葉県の幼稚園でした。楽しそうに遊んでいる子供達を見て、本当に良かったなと思いました。
Keplerという名前は、惑星の周期が楕円である法則を唱えたドイツのヨハネス・ケプラーからもらいました。体を使って、物体の動きを理解する。そんな体験をしてもらいたいと思い、名付けました。
Keplerは今もいくつかの幼稚園で元気に活躍しています。